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白昼夢
第8章 余韻
「そうだよ、だから来るとき時間掛かってさ、あの時間になったんだよ…」
「そうだったのね、私、古川さんに騙されたと思ってたわ…」
「騙したりしてないじゃん…」
そう言うと古川は笑うのだった。
古川がバッグを持って席を立った。
私はかなり名残惜しかった。
そこで、ちょっと甘えてこう言ったのだ。
「古川さん、ハグして…」
「いいよ…もうサヨナラだね…」
そう言うと古川は私の身体をハグして抱きしめてくれたのだ。
私はとても嬉しく感じた。
もう一度、古川に会いたいとも感じたが、多分これ一度切りだろうとも思っていた。
それは、間違いないと思っていた。
玄関に向かう古川を後から追った。
私は玄関に行くとこう言ったのだ。
「帰りはパーキングまで一人で行ける?」
「え?ちょっと自信ないかも?」
「なら、途中まで案内するわ…」
「うん、ありがとう…」
そう言うと私たちは引き戸を開けて外に出た。
外に出ると容赦なく太陽の日差しが私たちの身体を貫いた。
「まだ、暑いね…」
「そうね、もう午後3時も過ぎてるのにね…」