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過去を塗りかえて
第8章 罠
「ねぇ・・・」
甘い囁きが続く。

「私のこと・・好き・・・?」
覗き込む瞳が潤んで、妖しい光を散乱させている。

「あ、あのぉ・・・」
混乱しながらベッド脇の時計を見た。

11時を過ぎている。
絵美との待ちわせの時間を思い出す。

「いけないっ・・・」
慌てて起き上がると、床に散乱している自分の服を急いで身に着けた。

「ご、ごめんっ・・伊藤さんっ・・・」
何が何だか、頭が混乱して分からなかった。

只、ひたすらに絵美との待ち合わせ場所に急いだ。
だが、そこには誰もいなかった。

待ち合わせ時間よりも二時間も過ぎているのだ。
当然のことだろう。

ラインも。
何通も溜まっていた。

何度か返したけど。
既読にはならなかった。

誤解を解かなければ。
そう、思って振り返った時。

沙也加が不敵な笑みを浮かべて立っていた。
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