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過去を塗りかえて
第12章 条件2
2023年11月8日 PM2:00

実験室に入ると、透明なガラスケースが置かれた大きな台があった。
正確に言うと棺桶のような大きさで、側面はグレーのパネルで上部にドーム型のガラスが覆っていた。

絵美はゴーグル付のヘルメットをかぶせられ、ケースの中に横たわった。

「始めますが、よろしいでしょうか?」
ヘルメットに内臓されているスピーカーから男の声が響いた。

「はい・・お願いします・・・」
絵美は身動きできず、痺れる唇でようやく声を出した。

ケースに入る前に、注射を打たれた。

「筋肉弛緩剤です。
脳に全ての刺激が集中するように
全身を麻痺させるのです。

人間の脳には未知なる力があります。
その部分を覚醒させたのが僕の発明です」

淡々と説明する男は注射針を抜くと、ガーゼで揉んで絵美のシャツを下ろした。

「時間は貴方がゼミのコンパに行く前に
セットしました。
貴方はコンパに参加し、
優太さんと一夜を共にするのです。

それで、貴方は優太さんと結ばれ、結婚することになるでしょう。

何度も言いますが、その際、唯奈ちゃん・・・
貴方の娘さんはこの世から消滅します。

今更、貴方を動揺させることを言って、
申し訳ありません。
では、いってらっしゃい・・・。

おっと・・・。
忘れていました。

貴方の転送の後、
結果を知るために貴方を訪ねます。
家の場所は変わっているかもしれませんので、
とりあえず、御父上の会社を覗いてみます。

ですので・・・。
僕が尋ねるまで決してここには来ないでください。
過去の貴方とパラドックスが
生じる恐れがあるので・・・」

男の声が徐々に遠くなっていく。
眠くなるわけではない。

身体はしびれているが、脳は逆に鮮明になった気がする。
両目を覆うゴーグルが真っ白に光る。

強烈な轟音が響く。
甲高い音も混じっている。

ケースが振動しているのは気のせいだろうか。
浮遊する感覚に包まれる。

飛ぶ。
飛んでいく。

様々な色の閃光が瞬く。
一瞬、真っ暗になった後。

再び白い光に包まれた。

そして。
絵美は。

時空を飛んだ。
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