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第8章 オークションの舞台裏

智樹は胸を張って、ミサに自信ありげに言った。

「でも最後、俺がココを逃がしただろ？しっかり扉から出ていくの見たんだから」

しかしミサは顔色１つ変えずに言った。

「逃げていれば、貴方はこっちに帰ってないわ……」

「確かに……なんで逃げなかったんだ？」

智樹がとぼけた表情で言うと、ミサが少し語気を強める。

「貴方が心配だからに決まってるでしょっ!？
これ見て……ココちゃんは孤独だった……」

パソコンに映し出された映像は、茜と奈菜のレズショーの後の、控え室の様子だった。

これって……
30分待たされたあの時間だ……

真優は化粧直しで壁際を向いている。

茜と奈菜は、部屋の隅で雑談している。

そしてピンク担当の女の子は不機嫌そうにスマホを見ながら、電子タバコを吹かしている。

そして心結は、その中央で床に泣き崩れて床に座り込んでいた。

すると困った様子で優斗が、色黒の男に向かって言う。

「親父？コイツ出たくないって、ごねてるんだけど……どうする？」

振り返った男の名は、

田中 誠(たなか まこと)40歳。

智樹が部屋から出ていくのを見た、あの色黒の男は、優斗の父親であり、この芸能事務所の社長だった。

「出ないって言ったって、客が納得しないだろ？
どうするつもりだ？」

冷静な口調で近づいてくる誠社長。

そんな状況でも、メンバーは誰一人、心結を気遣うものはいなかった。