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第10章 3度目のタイムリープ～メンチカ編～

智樹はこの世界線の記憶を探ってみた。

アイドルになったきっかけは、自分でも情けなく思うほどに単純なものだ。

智樹がずっと片想いしてきた心結の存在。

ただし今の心結との関係は、物心がついた頃から、顔見知り程度の薄い繋がり。

心結にとってはクラスメイト程度の認識だろう。

心結が自分には見せたことのない輝いた瞳で夢中になっているのは、先輩グループであるACEプリンスのメンバー。

玲音(れお)という男だった。

玲音(れお)24歳

サラサラの金髪を靡かせ、整った顔立ちと独特の色気で、ACEプリンスのリーダーでもあり、プリンスロードの店長としても圧倒的な人気を誇っている。

そして、彼こそが心結の推しメンだった。

智樹はそんな世界線の記憶に、自嘲気味に微笑む。

自分で言うのもなんだけど……

情けないな……

玲音に憧れる心結を振り向かせたい。
心結の目に少しでも映りたい。
そんな甘い考えで、心結の憧れの玲音と同じ「土俵」に立つことを選んだようだ。

それでも心結がこちらを見て、嬉しそうに「おめでとう」と笑うその姿は、智樹にとって、かけがえのないものだった。