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第20章 映画の試写会

心結はテーブルの上のカードキーを見つめたまま動けないまま。

どうすればいいの……？

心の中で、感情が交錯する。

このまま進むべきか、それとも引き返すべきか。

ふと視界の端に、こちらに向かってくる芸能記者達の姿が入ってきた。

彼らは皆、好色そうな目つきで心結を見ている。

その視線が何を意味するのか、心結には痛いほど分かっていた。

聞かれるのは女優としてのインタビューではない。

濡れ場を演じた感想や布団の中での真相だろう。

ゆっくり考える時間なんて……

ないよね……

智樹くん……？

どうすればいい……？

唇が小さく震え、足はその場に釘付けになっていた。

カードキーに手を伸ばすべきか、この会場から逃げ出すか。

心結は自分が出せないまま、テーブルの上のカードキーを見つめていた。

その時、心結の脳裏に電気が走るような感覚が起こった。

全く知らない記憶だが、山小屋で3人の男に襲われている1コマが鮮明に浮かんだのだ。

今の……何……？

危ないってこと……？

スタッフ達って複数……？

違う……女の人もいるかも知れない……

もしかすると、本当に話だけなのかも知れない……

人間は、良い方に転ぶ事も、悪い方に転ぶ事も、どちらも考えるもの。

そして大丈夫だと思う方を選ぶのだが、全てが良い方に転ぶ人生などあり得ない。

心結はカードキーを手にして、記者から逃げるように、会場を飛び出していった。

ホテルの最上階にあるスイートルームへ向かって。