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お題小説 カレイドスコープ
第1章 kaleidoscope
 11

『覚えているの?』

 もちろん覚えているさ…
 あのファーストキスの感動は忘れられない大切な思い出。

 でも、とうの昔にしまった筈…

 それから2人は何かといえばあの
『神社』に行き…

 そしてあの『大銀杏』の下で過ごし…
 まだ幼い恋を語り合い、ほのかな愛を育み…
 そんな淡い恋の想いの全てのきっかけの特別な場所になった。

 喧嘩をして仲直りした場所…

 映画の待ち合わせをした場所…

 家に来る前に待ち合わせをした場所…

 そして高校受験の合格祈願をした場所…

『神様って絶対にいるよね』
 と、2人で同じ高校に合格して喜んだ場所…

 中学1年生から高校3年生迄の6回、必ず『夏祭り』に一緒に行った場所でもある大切なこの『神社』のこの『大銀杏』の御神木。

 そして特別な場所…

「あ…」
 俺は気付くとなぜか、その『神社』の鳥居の下に立っていたのだ。

 あのしまい込んだ思い出の封印と共に、もう二度とはこの神社には来ない、いや、来たくははないと思っていた筈なのに…
 俺は無意識にも、いや違う。

 さっき偶然にも、過去をしまい込んだ筈のフタを開けてしまったから…
 まるで『万華鏡』の様に迷宮に迷い込んでしまったかの如くに…
 真っ直ぐ行く筈のあの角を曲がったようであった。

 いや違うかも…
 この『神社』の神様に導き寄せられたのかもしれない。

 なぜならそれは、封印した筈の過去のフタを開けてしまったから…


「ねぇ、神様って絶対にいるわよね」

「え?」

「やっぱり居たわぁ」

 すると突然、後ろから…
 そんな茉優の声が聞こえてきたのだ。

 そして俺はその声にハッと振り向くと…
 笑みを浮かべた茉優が立っていた。

「あ、ま、茉優…」

「ぜーったい、絶対にここに来てると思って…
 来ちゃったの…」
 茉優は少し恥ずかしそうに言ってきた。

「カラオケは?」

「ううん、だって…
 だって…
 カラオケなんかより…
 あんなメンバーより…
 勇人の方が全然大切だから…」
 茉優は恥ずかしそうに、はにかみながら、そしてうつ向き加減でそう呟く。

「あ…ま、茉優…」

 俺は…

 そう無意識に…

 自然に…

 茉優に歩み寄り、そして肩を抱いた。

 いや、見えない神様に引き寄せられたかの様に…

 茉優を抱き締めた…


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