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お題小説 カレイドスコープ
第1章 kaleidoscope
 20

 その時、真夏の湿った涼しい夜風が…
 ザザザザーー
 と、音を鳴らして吹き抜けていき、この大銀杏の拡がっている枝葉を揺るがして、落ち葉を舞い上がらせてきた。

「あ…ん」
 カサカサカサ……
 その舞い上がる落ち葉が、俺と茉優の頬を掠め、撫でてくる。
 
 そして…
「あ、髪に落ち葉が…」
 ショートボブの茉優の髪に落ち葉が止まっていたから、俺はそれを振り払おうと顔を寄せると…

「……………」
 茉優と目が合った。

 そしてその瞬間に、俺の心は一瞬にしてあの頃の、あの時の、あの刻に…

 そう、まるでタイムスリップの如くに心を懐され、戻されてしまい…

「あ……ん……」
 俺は茉優を抱き寄せキスをする。

 それは無意識であった、いや、本当にその瞬間…
 あの刻、あの『万華鏡』を覗いていた茉優に魅せられ、惹かれて思わずキスをしてしまったあの昔の様に、心が一瞬にして魅き寄せられてしまったのである。

 だが…
「あ、ん…ん、んん……」

 あれから約20数年が経ち…

 俺達は既にすっかりアラフォーという年代の大人の男と女になっていたから、そのキスのせいですっかり心とカラダの昂ぶりを疼かせてしまい…
 唇が離せなく、いや、唇を、舌先を吸い合い、絡め合う熱いキスを貪り合って離せなくなっていた。

「あ…ん、んん……」
 
 もう離れられなく…
 いや、もう離れたくない。
 茉優とのキスの甘さがそう想わせ、心が激しく震え、蕩け、融ける様だ。

 そして心とカラダの昂ぶりが、更に激しく疼いてくる…

 もう2人はあの時の様な大人の階段をゆっくりと、一歩ずつ上がっていたあの青春の頃ではなかった。

 そして昂ぶりの疼きによるカラダからの導きの答えの先を…
 いや、もう、この疼きを鎮める術を知っている大人の男と女なのである。

「ん、ふ、ふうぅ…」
 すると茉優がいきなり唇を離して…
「ね、ねぇ…」
「え?」
「ね、ねぇ、しよ…」
「え?」

「今からしようよ、ううん、して、抱いてよ」
 そう囁いてきた。

「え?」
 そう、もう本当に俺達2人はあの時の、あの頃とは違うんだ…
 心とカラダの昂ぶりの疼きの鎮め方を分かっている、大人の男と女になっていたのだ。

「して、抱いて、そして…
 わたしを確かめてみてよ」

「え?」

 確かめてみてって、何を?…



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