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お題小説 カレイドスコープ
第1章 kaleidoscope
 26

「えっ、キャッ、本当にっ?」
 すると茉優はそんな嬉しそうな感嘆の声を上げてくる。

「あ、うん、本当だよ」

「うわぁ、嬉しいぃ」

「うん本当さ、実はさ…」

 ……実は、あの居酒屋で一目見た瞬間から、もう心が一瞬にして、昔のあの時、あの頃、あの刻の想いに還っていたんだよ…

「だけどさ、こんな現状の俺だからさ…
 その想い、昂ぶりは素直に言葉には出せられなかったんだよ…」

「そんなさぁ、あんな昔の事はさぁ、気にしないでさぁ…」

「あ、う、うん…」

 だけど、あの6年前のあの事件の衝撃と心の傷は俺にとっては本当に、とても深かった…

「大丈夫よ、わたしは信じていたし、ううん、信じているから…
 だから、だからさぁ…」

「うん?」

「だからさぁ…
 わたしを信じてやり直そうよ…
 あ、いや、いや違うわ…
 やり直すんじゃなくてさぁ…」

 ……新しく生まれ変わったつもりで始めましょうよ…

「わたしとさぁ…あ、あと、わたしの娘ともね」
 また茉優は、満面に笑みを浮かべてそう言った。

「あ、う、うん、そうだな…」

「うん、そうよ」

 だけど今…

 この明るい茉優の顔を見ていると…

 本当に、本気で、また新しく人生をやり直せる様な気がしてくる。

「きっと、きっとねぇ…
 今夜はさぁ…」

 ……亡くなったおばあちゃんがわたしと勇人を引き合わせてくれたのよ…

「ううん、おばあちゃんの『万華鏡』もね…」

「あ…うん、そうかも…」

 そうかもしれない…
 ばあちゃんが亡くなったから、この実家に、この田舎に帰ってきた、いや、帰ってこなくてはいけなくなった。
 
 そして偶然にも幼馴染栄ちゃんと再会し、今夜のプチ同窓会に誘われ…
 茉優と再会できたのだ。

 そして茉優との久しぶりの会話にあの『万華鏡』の話題出て…
 そのばあちゃんの形見の『万華鏡』のおかげで茉優との懐かしい思い、想いが蘇り、あの昔の、あの頃の、あの時の、あの刻に、一気に顧れた。

 いや、心の奥底にしまい、閉じた筈のフタが再び開いたのだ…




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