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お題小説 カレイドスコープ
第1章 kaleidoscope
 6

 まゆ…

 茉優…

 村上茉優…

 それは俺の青春の甘酸っぱい思い出、いや、青春の思い出の全てといってもいい存在。

 茉優は中学、高校時代の彼女であった…
 小学校は違ったのだが、中学1年の時に同じクラスとなり、俺が一目惚れしたのだ。

 そして中学1年の夏休み、いや、あれは夏休み直前の『夏祭り』がきっかけで付き合い始めたのである…

 中学、高校時代は本当に好き、大好き、いや、愛していた…
 いいや、まだあの当時は『愛』という想いを理解してはいなかったのだが…
 だが、今、過去を振り返り、あの当時を思い返すと、それは『愛』そのものといえたと思う。

「ああっ、来た、茉優ぅ、こっちぃ」
 そんな逡巡の想いは、隣の斎藤弘美のそんな声によって現実に戻される。

「あっ」
 そして顔を上げると目の前に、その茉優、村上茉優が立っていた。

「あっ、えっ、は、はやと、勇人なの?…」
 その目の前の懐かしい存在が、そんな驚きの声をボソッと呟く様に言ってきた。

「あっ、う、うん、ひ、久しぶり」

「え、あ、う…ん…」

 ………………………………………

 そして茉優と俺の間だけが、一瞬、時間が止まった感じがした…

「さぁ、茉優ぅ、ここに座ってぇ」
 しかしそんな斎藤弘美の声にその一瞬の時間は消されてしまい、茉優を俺の隣へと導く、いや、導いてくれたのだ。

 そう、そんな斎藤弘美は茉優の親友であり、唯一、俺と茉優の関係のほぼ全てを知っているであろう存在なのである…

「は、勇人、久しぶりね、あ、そう、そうか…
 おばあちゃんは残念でしたね…」

「あ、う、うん、そう…知ってるんだ?」
 思わずそう問うてしまう。

「えぇ、だってぇ茉優はずうっとこっちに住んでいるのよぉ」
 と、すかさず斎藤弘美が隣から口を出してくる。

「え、あ、そうなんだ」
 
「うん、そう、ずうっとこっちに…」
 茉優は静かにそう呟く。

「ほらぁ、勇人くんはさぁ、逆にぃ、ずうっとこっちに帰っても来ないからさぁ…
 浦島太郎状態なのよねぇ…」
 
「あ、う、うん、そうかも…」

 確かに大学入学と同時に上京し、成人式の同窓会以来からこの同級生、幼馴染達とは全く会ってはいなかったし、ましてや実家にだって10年振りの帰省でもあった訳であるから…
 正に、俺は、浦島太郎状態といえる。



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