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雨が好き
第36章 わがまま
次の日、私は少しの焼き菓子と、『みなと町』のカフェラテを持って、
再び病室を訪れた。

今日、お父さんは、お店を開いている。
なので、私は電車とバスを乗り継いで、
ひとりでここまでやってきた。

面会時間が来て、すぐに病室に入る。
そこには、ベッドの上で上半身を起こした蒼人さんがいた。

「みなとさん・・・」

私の姿を見るや、蒼人さんが言った。
その声を聞いたら、また泣きそうになってしまった。

できれば、このまま駆け寄って抱きつきたいと思った。

でも、できない。

「蒼人さん、起きて大丈夫?」
抱きつきたいけど、やはり恥ずかしくて、
こう聞くのが精一杯だった。

「うん、失敗しちゃって・・・」
うつむいて首の後ろをかく。

そう言って笑う蒼人さんを見て、
気持ちが溢れかえる。

すごく・・・すごく、心配した。
体が震えて、怖かった。
涙が、いっぱい出た。

いっぱい。
心の中に言葉が、いっぱい。
でも、どう言っていいかわからない。
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