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雨が好き
第61章 日帰り温泉
【日帰り温泉】

紅葉の渓谷を抜けて、吊橋を渡る。
次の尾根までは、あと1時間位だという。

川のせせらぎを背にして、私達はまたゆっくりと山道を登り始める。
休憩しながら、急がないで、一歩一歩、歩いていく。

森を抜けると、唐突に空が現れた。
高い高い、秋の空。
そして、ぐるりと一周、パノラマのような景色が広がっていた。

「ここらで一番高い山のてっぺんです」
すごく遠くまで見える。
蒼人さんが、あっちに見えるのは、そこに見えるのは、と教えてくれた。

遠くの景色が青く霞んで、地平線に揺らいでいた。

頂上には、ハイキングする人用なのか、石造りの机と椅子が用意されていた。
「ここでお昼にしましょう」

私は持ってきたお弁当を広げ、お手拭きを準備。
蒼人さんはリュックから何か箱のようなものを取り出していた。
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