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雨が好き
第9章 美術館
また、あの表情だ
どこか、遠くを見るような
それでいて、悲しそうな

神社でも見た
お花屋さんでも見た

彼の視線を辿って、私もその絵に目を向ける。

印象的な、池の絵だった。
中央に柳のような木
それを取り巻く池には、蓮の花
そして、いくつも重なる丸い波紋
全体的に、灰色の風景

雨に煙る、優しい池の絵だった

その絵を見つめる彼は
泣きそうなほど、優しい目をしていた。

「蒼人・・・さん?」
なんだか、そのまま絵の中の雨に溶けてしまいそうだったから、
私は彼に声をかけずにはいられなかった。

はと、気づくと、彼は私に目を向ける

あれ?

いつもの、蒼人さん・・・。

「ごめん・・・つい、見入っちゃって」

そのまま次の絵に進む。

蒼人さんは、最後まで、その池の絵を
「きれいだ」とも「好きだ」
とも言わなかった。
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