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雨が好き
第10章 美術館の外

美術館の外に出ると、大分外が暗くなっていた。
宵闇じゃない。
雲が、立ち込めているのだ。
「嫌な、雲だな」
蒼人さんがポツリと言った。
駅に向かって歩いているうちに、さあっと冷たい風が吹き下ろしてきた。
あ・・・と思ったら、
ポツリ、ポツリ、と雨が降り出した。
「急ぎましょう」
蒼人さんが足を早める。それでも私に気を使ってくれているのがわかる。
あ、そうだ・・・。
「待ってください、私・・・」
バックから傘を取り出した。
深いブルーの折りたたみ傘。割とお気に入りだった。
パッと開くと、少し暗くなった灰色の道に、
まるで梅雨時の紫陽花が花開いたような感じになる。
「濡れちゃいます」
傘をさしかけると、蒼人さんが急いでいた足を緩めた。
「あ・・・」
何か、言いたげにして、私を見るが、
結局、何も言わなかった。
雨はそれほどひどくなかったけれど、
並んで歩けて、私はなんだか幸せな気持ちになった。
欲を言えば、もう少しだけ、この傘が小さければ良いのに、
そう、思ってしまった。
宵闇じゃない。
雲が、立ち込めているのだ。
「嫌な、雲だな」
蒼人さんがポツリと言った。
駅に向かって歩いているうちに、さあっと冷たい風が吹き下ろしてきた。
あ・・・と思ったら、
ポツリ、ポツリ、と雨が降り出した。
「急ぎましょう」
蒼人さんが足を早める。それでも私に気を使ってくれているのがわかる。
あ、そうだ・・・。
「待ってください、私・・・」
バックから傘を取り出した。
深いブルーの折りたたみ傘。割とお気に入りだった。
パッと開くと、少し暗くなった灰色の道に、
まるで梅雨時の紫陽花が花開いたような感じになる。
「濡れちゃいます」
傘をさしかけると、蒼人さんが急いでいた足を緩めた。
「あ・・・」
何か、言いたげにして、私を見るが、
結局、何も言わなかった。
雨はそれほどひどくなかったけれど、
並んで歩けて、私はなんだか幸せな気持ちになった。
欲を言えば、もう少しだけ、この傘が小さければ良いのに、
そう、思ってしまった。

