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雨が好き
第11章 雨宿り
今日、雨が降った。
3日ぶりの平日の雨。
もしかしたら、最後の梅雨の雨。

これが終わったら、次は秋雨前線を心待ちにしなければいけない。

どうしよう・・・
どうしよう・・・

蒼人さんが、カフェラテを飲む横顔。
楽しそうに話す森での出来事。
彼が、長いまつ毛を伏せがちにして文庫本に目を落とす優しい時間。

ぎゅっと、手を握った。
勇気を出さなきゃ。
彼の雨宿りが終わってしまう前に。
私の気持ちを・・・伝えなきゃ。

私の気落ち・・・?
どんな・・・気持ち?

なんだろう、私の願いが、わからない。
ずっとずっとお父さんと二人きりだった私は、
今抱えているこの気持ちに名前をつけられなくて困っていた。

いて『ほしい』
きて『ほしい』
お話して『ほしい』

こんなにたくさんの『ほしい』を抱えたことなんて、今までになかった。

カラン・・・

蒼人さんが、お会計を済ませて『みなと町』を出ていったときの鐘の音で、私は我に返る。

結局、私は、お盆を抱えてぼんやりと扉を見ることしかできなかった。
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