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雨が好き
第92章 ひなまつり
【ひなまつり】

恵美子おばさんに持っていってあげて
お父さんに頼まれて、私はサンドイッチのセットをおばさんの家にお届けした。

恵美子おばさんは、『みなと町』の隣に住んでいる。
お母さんの妹さん、だった。

お母さんは私を産んですぐに病気になり、亡くなってしまった。
その後、お父さんはなんとか私をひとりで育てようとしたけれども、
小学校三年生の時、『あのこと』があって、
それがきっかけで、お母さんのお母さん、私のおばあちゃんを頼ってこの町に越してきた。

会社を辞めたお父さんは
ここで古い喫茶店を買い取って、『みなと町』を始めた。

「みなとには『お母さん』が必要だと思ったんだ」

いつだったか、お父さんはそう言っていた。
その『お母さん』になってくれたのが、数年前に亡くなったおばあちゃんであり、
恵美子おばさん、だった。

小さい頃、自分でも自分の心がどうしようもなかったとき、
恵美子おばさんはたくさん助けてくれた。

動けないときに、お風呂に入れてくれたり、
身体をさすってくれたりした

女の子の身体のことを教えてくれたのも
恵美子おばさんだった。

『みなとちゃんは、きれいな体してるねぇ』

小さい頃、一緒にお風呂に入った時
おばさんは、よくこう言ってくれた。
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