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やっと、逢えた
第1章 ある雨の日
その日の俺はひどく疲れていた。


夜型の生活が常なのに、
傲慢なクライアントに呼び付けられて苦手な昼間の外出になった。


仕事はうんざりするような内容で、
時間も掛かってしまったけどなんとか終えて、
タクシーを呼んでもらって帰ることにしたら、
あまりにも『臭くて』乗ってられず、
どこかよく判らない処で車を降りたら雨が降っていた。


傘を待つ習慣はないから、
同じ方向に取り敢えず歩き始めた。


どうせ、風邪をひくこともない。


空車のタクシーが通り掛かったら乗れば良いと思いながらスタスタと歩いた。



しかし、本当に臭かった。
あの運転手、煙草は辞めた方が良い。
でも、余命もたいしてないから、
好きなら辞めなくても良いのか。

肺がんだな。

本当に死期が迫った人間は、
独特でなかなか酷い臭いがする。

正確には死期が迫った人間の血液の臭いなんだけど、
毛穴という毛穴、呼吸、全てから濃厚に染み出してくるから、
俺みたいな人間にはなかなか辛いものがある。



そんなことをぼんやり考えていたら、
俺の腕に何かが当たっているのに気づいた。
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