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やっと、逢えた
第1章 ある雨の日

「んっ?」
かなり小柄な女の子が俺の隣に居て、
一方の手を精一杯伸ばして小さな傘を俺にさし掛けるようにしていた。
「あの…。
あまりにもお顔の色が悪いので…。
風邪、ひいちゃいますよ?
どこまでですか?
あ、私、そこの駅から地下鉄に乗るので、
良かったらこの傘、どうぞ?」
その女の子はそう言って、
俺の手に傘の持ち手を握らせるようにして、
そのまま吸い込まれるように地下鉄の階段を駆け降りてしまった。
「えっ?」
多分、俺は物凄く間抜けな顔をしていたと思う。
間抜けな、
というより、
腑抜けた顔だったかもしれない。
女の子の指先が俺の手に触れた瞬間、
雷に打たれたような感覚に襲われて、
立ち尽くしてしまった。
彼女だ。
彼女が、俺の運命のヒトだ。
俺の直感がそう言っていた。
でも。
俺は彼女の顔をちゃんと観る余裕と時間はなかった。
指先の感覚と、
心地良い柔らかい声と、
おっとりした可愛いのに品のある話し方と、
とても「美味しそう」な匂いと、
階段を降りて行く時の後ろ姿しか覚えていなかった。
慌てて追いかけてみたけど、
勿論、追いつかなかった。
電車は色々な「臭い」がキツイので、
階段をトボトボ登って、
最初に来たタクシーに乗って、深く溜息をついた。
それが彼女と初めて逢った日の出来事だった。
かなり小柄な女の子が俺の隣に居て、
一方の手を精一杯伸ばして小さな傘を俺にさし掛けるようにしていた。
「あの…。
あまりにもお顔の色が悪いので…。
風邪、ひいちゃいますよ?
どこまでですか?
あ、私、そこの駅から地下鉄に乗るので、
良かったらこの傘、どうぞ?」
その女の子はそう言って、
俺の手に傘の持ち手を握らせるようにして、
そのまま吸い込まれるように地下鉄の階段を駆け降りてしまった。
「えっ?」
多分、俺は物凄く間抜けな顔をしていたと思う。
間抜けな、
というより、
腑抜けた顔だったかもしれない。
女の子の指先が俺の手に触れた瞬間、
雷に打たれたような感覚に襲われて、
立ち尽くしてしまった。
彼女だ。
彼女が、俺の運命のヒトだ。
俺の直感がそう言っていた。
でも。
俺は彼女の顔をちゃんと観る余裕と時間はなかった。
指先の感覚と、
心地良い柔らかい声と、
おっとりした可愛いのに品のある話し方と、
とても「美味しそう」な匂いと、
階段を降りて行く時の後ろ姿しか覚えていなかった。
慌てて追いかけてみたけど、
勿論、追いつかなかった。
電車は色々な「臭い」がキツイので、
階段をトボトボ登って、
最初に来たタクシーに乗って、深く溜息をついた。
それが彼女と初めて逢った日の出来事だった。

