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愛欲ハーレム・妄想の処女〜琴葉【官能作家・霧山純生の情事】
第4章 温泉旅館で姫初め〜温泉宿へ
 武田信玄の隠し湯という謳い文句のI温泉は、ひと昔前までは人気があった。特急と鈍行列車を乗り継げば都心からでも数時間で着く。その利便性からY県有数の観光地でもあった。
 
 その隆盛へ水を差したのは、他でもない、新コロナウィルス禍である。I温泉のみならず日本各地のサービス業が痛手を被った。そしてウイルス禍が収束した後も客足は戻らなかった。各地の老舗旅館や由緒あるホテルの廃業が相次ぎ、その負の連鎖はいまだに爪痕を残している。

 私と美月を乗せたシトロエンがI温泉の街をゆっくり抜けていく。観光客らしき人影はまばらだ。明らかに寂れている。しかし鬼怒川温泉のように、巨大な温泉ホテルの廃墟が目立つというほどでもない。ダメージを受けたにしても、やはり東京から近いという利点は強みだ。

 我々の目的地である緑風荘は、市街を抜けた先、山並みが迫る麓にあった。がらんとした広い駐車場の隅に車を止める。

「これはこれは、霧山先生でいらっしゃいますよね」

 車から荷物を下ろしていると、小太りの中年の男に声をかけられた。

「そうです。こちらのご主人ですか?」
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