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奴隷館 Crime d’amour〜Mの肖像
第2章 美しきヴァイオリニストの淫夢
「また、あの夢を見たのですね」
「そうなんです」
来月から始まる海外ツアーの準備をしなければならないのに、その夢のせいで、ここのところ眠れぬ日々が続いていた。ヴァイオリンの練習にも集中できない。
プロの演奏家である増島香緒里(ますじまかおり)は、担当の精神科医へ、いつものようにその夢の話しをした。彼女がまだ音大生だった頃から、時折、見るようになった夢だ。
香緒里は暗いステージの上に立っている。これから試験が始まるのだ。ヴァイオリンを構えた彼女にスポットライトが当たる。すると……。
「裸なんです。わたしはなにも着ていなくて、ヴァイオリンだけを持って立っているんです」
驚いた彼女が、身体を隠そうとしてうずくまろうとすると、客席から「なにをしている」という叱責が飛んでくる。客席は真っ暗で、彼女からは闇しか見えない。その客席から、早く演奏を始めなさい、という厳しい声が飛んでくる。
「男性の声です。姿は見えないけれど、わたしの父ぐらいの、年配の男性の声なんです」
「そうなんです」
来月から始まる海外ツアーの準備をしなければならないのに、その夢のせいで、ここのところ眠れぬ日々が続いていた。ヴァイオリンの練習にも集中できない。
プロの演奏家である増島香緒里(ますじまかおり)は、担当の精神科医へ、いつものようにその夢の話しをした。彼女がまだ音大生だった頃から、時折、見るようになった夢だ。
香緒里は暗いステージの上に立っている。これから試験が始まるのだ。ヴァイオリンを構えた彼女にスポットライトが当たる。すると……。
「裸なんです。わたしはなにも着ていなくて、ヴァイオリンだけを持って立っているんです」
驚いた彼女が、身体を隠そうとしてうずくまろうとすると、客席から「なにをしている」という叱責が飛んでくる。客席は真っ暗で、彼女からは闇しか見えない。その客席から、早く演奏を始めなさい、という厳しい声が飛んでくる。
「男性の声です。姿は見えないけれど、わたしの父ぐらいの、年配の男性の声なんです」