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奴隷館 Crime d’amour〜Mの肖像
第17章 余韻のなかで〜緋美
 W大学哲学部教授 四宮一彦とあり、電話番号とメールアドレスが印字されている。裏を見ると、手書きの端正な文字で、こう書いてあった。

「堕落は快楽の薬味。堕落がなければ快楽も瑞々しさを失ってしまう。そもそも限度を超さない快楽など、快楽のうちに入るだろうか?」

 ええと、これは?
 ああ、思い出した。マルキ・ド・サドの小説の一節だ。
 あの人らしい洒落た真似をする。

 捨ててしまおうと思ったが、気が変わった。四宮教授からもらったカードはとっておくことにした。

 連絡するかどうかは、とりあえず保留だ。とりあえずは。

 バスから上がり、髪を乾かす。時刻は四時を回っている。窓の外はまだ暗い
 
 この館に来た女は、牢の中で裸で夜を明かすルールがある。しかし私は免除された。理由は言わずもがな、だ。きつい責めを受けた場合も同様。ベッドで寝るのを許されている。

 痛めつけられたからだをベッドに横たえる。疲れてはいても、幸せだった。そして私はすぐに眠りに落ちた。
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