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第2章 葬儀

田所修（たどころおさむ）は神戸にいた。大学時代の友人が亡くなったとの知らせを受け、急遽東京から駆け付けた。死因は乳がんだった。遺影は穏やかな笑顔だった。

故人の名は落合彩花（おちあいあやか）。田所の学生時代の恋人であった。48歳、早すぎる死であった。田所は彩花が都内の男性と結婚、子供がいたと聞いていた。だが離婚し、再婚の末、彼女が神戸に移住したことも知らなかった。

田所は一輪の花を手にし、故人の棺に近付いた。やや遠慮がちに参列者の輪に交じった。作家として顔と名前が知られていたためか、参列者の何人かが彼の顔を見つけた。驚きの表情を浮かべ、空間を作り、彼を通していた。ちょうどその時、一人の女性が棺に花を供えていた。背が高く、髪を後ろに束ね、細身の女性だった。田所はその後ろ姿に肝を冷やす。

その女性が振り返り、一瞬驚いた表情を見せた。そして田所に軽く会釈をした。彼はその女性と面識がなかったが、同じように会釈を返した。ちらりと彼女を横目で見た田所は、似ている…と心の中で呟いた。