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溶け合う煙のいざないに
第2章 答え合わせ

ドアの施錠音を待たずに三度目のキスを楽しみながら靴を脱ぐ。
仕返しとばかりに卵塚を壁に押し付け、右腕をぎちりと掴む。
痛みにびくついて緩んだ口から唇をずらし、首元に舌先を下ろしていく。
「あっ……や、待って……って」
焦ったように肩を掴まれるが、構わず耳の下まで舌を這わせると甲高く息を吸う悲鳴に、ゆらりと支配欲が頭をもたげた。
左手でセーターを押し上げながら、逃げないようにと足の狭間に膝を固定する。体格差から本気で抵抗すれば振りほどけるのは互いに承知済み。そうしないのは合意の証。
「……やっぱり”待て”が出来なかったな」
圧を込めて囁くと、怯えるように震えた体を密着させて耳の輪郭を沿うように舐め上げた。咄嗟に押しのけようと跳ねたが、しがみつくように壁に爪を立てた。
「奥までねじ込んでほしい? それとも噛まれたい?」
鼓膜に吐息を溶かすように、ゆっくり問いかける。
はっ、はっ、と荒い息をするのもやっとな卵塚が、絞り出すように答えた。
「か、噛んで……ほしい、っああ!」
軟骨に歯を立てると、はしたなく大きな口を開けて叫ぶから、左手でぐっとあばらを掴んだ。意図を察して口元を抑えた手に、上出来だと力を緩める。
芸を仕込むような躾の瞬間は脳を滾らせる。
窪みに舌を這わせながら不規則に甘噛みを続ける。
歯が当たる度に声を上げ、ずず、と音を立てながら腰が砕けて小さくなっていくのが愛しくて、覆い被さるように抱きしめて口を離した。身を起こすと、両足を床に投げ出した卵塚が上気した顔で見上げる。
「ご……ごめん、なさい」
「なんで謝るんだよ」
みるみる潤んでいく目に不安が過ぎる。
「オレ……嬉し、過ぎて……」
下がった視線に安堵が広がる。
「シャワー行こう」
湿った下着を今すぐ脱ぎたいはずだ。
耳だけで果ててしまったことが相当恥ずかしいのか、顔を起こせずにいる卵塚の手を引いて脱衣所に向かう。
先に自分の衣服を脱ぎ置いてから、固まったままの赤いセーターを両手で掴んだ。
「万歳しろ。脱がせてやる」
「……待って」
金髪の隙間から覗いた瞳が、再度熱を帯びる。
「芦馬さん、脱毛してんだ」
ああ、そうだったと慣れすぎた下半身に眼を落とせば、数分前が嘘のように俊敏に衣服を脱いでいく。雑貨屋店員とは思えないほど、がっしりした胸に腕の太さに視線が奪われる。

