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わたしの日常
第11章 S川さんからの返信
 「やっぱり正直な人なんだね、S川さんは。ここまであけすけに教えてくれるとは。悦子も見るかい」

 男女の交合写真が載っているという雑誌。小さな紙がはさんであるページを開くと男女の交合写真。カメラを向いて男の人にまたがって大きく脚を開いている女の人。目のところ、そしてふたりがつながっているところが黒く塗られて隠されているがまぎれもなく『れいこ』さん。S川さんのお嫁さん…。

 お二人の昂りが伝わってくる。このような写真をわたしたちに送ることもれいこさんは承知してのことなのだろう。『変態』などと自嘲されているけれど、わたしも間違いなく昂ぶっている。そして、義父も。ほかのページも開いてみる。『夫婦交歓』というタイトルの下、二組の男女の交合写真が何枚も載せられている。

 「こういう雑誌があるのだね」
 「そうですね」
 「S川さんは何度も愉しんでいるのだろうね。夫婦交換」
 「そうなんでしょうね」
 「いいのかい? 本当に」
 「お義父さんはよろしいのですか?」

 義父はしばらく黙ってから口を開いた。

 「悦子さえよければ…経験してみたい。息子から寝取っておいてこんなことを言うのもなんだが…分かち合いたいのだよ、悦子の素晴らしさをね…」
 「S川さんも同じ気持ちなんでしょうね。仲睦まじそうでしたし」
 「同じものを感じたのだろうね。まあ、実際、同じだったんだが…」
 「そうですね」

 改めて二人でページに目を落とす。

 「なんだかホットとしたよ」
 「わたしもです」

 義父と嫁とが日々まぐわっている後ろめたさに変わりはないけれど、その後ろめたさと密かな悦びを愉しんでいる人たちがたしかに同じ空の下にいるということに安堵する気持ちだった。そしてその悦びをともにしたいというS川さんたちと出逢えたことに気分が昂っていた。

 「S川さん、これほどのお手紙を書かれたのですから、心配されているでしょうね」
 「そうだね。早速返事を出さないと。だが、その前に…」

 わたしたちは日が傾くまで何度もまぐわった。
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