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なりすました姦辱
第3章 報復されたハーフモデル


 かつてのバイト先や友人の家の近辺、何なら近所の公園、念のためにもう一度大学にも赴いてみたが、土橋の行方は一向につかめなかった。

 神奈川の実家にも足を向け、外から様子を伺ってみた。買い物に出かける母、部活帰りの弟の姿はいつも通り、省庁勤めで帰りが遅い父の顔は見ることができなかったことじたいも、またしかりだった。突然中年男を名乗り始めた自慢の息子が、実家を頼ってきている風にはとても見えない。見た目が息子の姿で奇妙なことを言い始めたのであれば深く心配するに留まるが、醜悪な中年が息子を名乗ってきたなら深い恐怖に陥れられるだろうから、保彦は何も声を掛けずに実家を離れたのだった。

 思いつくところはどこへでも行ってやる、と思ったが、そろそろ思いつかなくなってきた。しかし、どこともなく当てずっぽうで歩き回るには、東京という街は巨大が過ぎる。

 ここまでくると、土橋は、当事者どうしで合流したいとは考えていない、としか思えなかった。

 それどころか、もとの肉体に戻るつもりはさらさらない──そう考えざるを得えなかった。

 46歳にして童貞だったことが象徴的。恵まれない容姿に、ウダツの上がらない生活、かつての保彦の予想は的中で、一昨日には消費者金融の督促状が届いていた。そこへ突然、25歳も若返り、有名大学を好成績で卒業見込みで、背も高く端正なルックス、大富豪というわけではないが実家も太い、そんな人間に生まれ変わったのである。

 にしても本当に、このまま武藤保彦として生きていくつもりなのか?

 だいぶんビッチ化が進んでしまったが、土橋には眩しく見えたろうイケ女OL、イコール、リリを脅迫し、童貞を捨てさせてもらう約束をし、奴隷化することを目論み、何ならライブチャットで巻き上げられた恨みも晴らせる、そんな奇跡のようなチャンスに巡り会えていたのに……。

(……愛梨!!)

 実家からの帰りの電車の中で、疲労困憊でシートにぐったりと撓垂れて思索していたが、周囲の目も憚らずに飛び上がりそうになった。

 有り余る精力がありながら、不幸な見てくれのせいで女に全く相手にされてこなかった土橋の前に、中身が入れ替わったなど知る由もない、清純で可憐な女子大生が現れたら……、これでもいい、いや、こっちのほうが断然いい、となるに決まっているではないか。
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