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なりすました姦辱
第1章 脅迫されたOL
 驚いた土橋が即座に名前を口にしたということは、よく知った女だった、というわけだ。

(バッカだなぁ、この女)

 慌ててカメラを塞ぐも時すでに遅し、それでも平然と「誰、それ?」とでも言えば誤魔化せたかもしれないものを、本名をフルネームで呼ばれて焦った反応を曝してしまっては、はいそうですと認めてしまったようなものだ。

 いいように巻き上げられた土橋はバカだ。同情するつもりはない。

 だがリリ……こと、広瀬汐里に対しても、気の毒というよりも、ざまあみろという思いの方が強かった。

 本人の胸の内はどうであれ、最終的に、汐里は土橋の要求を吞んでいた。
 吞まざるを得なかった、と言ったほうが正確だろう。

 土橋なんぞとのセックスをOKしてまでも、汐里は動画の流出を、どうしても避けたいのだ。生バストを晒してしまったからというより、ライブチャットのキャストととして男から金を巻き上げてきた行為じたいが、大いなる弱みなのだ。いくらチャットレディの職務に忠実だったのだ、と言い張ろうが、会話録が世に出されれば、このご時世、叩く奴はうようよと出てくる。何より、今、残業を余儀なくされている本業のほうは、無事ではあるまい。

 OSが、右下に通知をポップアップをした。

 クリックすると、カレンダーアプリには、今日の予定のところに『童貞卒業記念日 兼 牝奴隷獲得記念日』と記入されていた。

 つくづくキモいが──土橋にとって、今日が人生最高の日になるはずだった。
 よりによって、待ちに待った当日、肉体が入れ替わってしまったのだ。

 もし、金に目が眩んで身を危険に曝している美しい女を、醜い男が卑劣な手段を用いて貶めたとしても、自分には何の非も咎もないのか──、そんな考えが頭を擡げると、保彦の胸臆に仮初の悪欲が広がっていくのだった。










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