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なりすました姦辱
第2章 制裁されたシングルマザー
 汐里が仕事を終えると、保彦は肩の力を緩め、腕から手を離した。

 手枷からは鎖が伸び、天板の下の太足に固定されている。いっぱいまで張られておらず幾ばくの遊びがあるが、抑力から解放された涼子が身を起こそうとしても、一定のところで天板の角に張って阻まれた。準備をする際、ここの長さについては予測するしかなかったが、誇らしいほどの絶妙なセッティングに満足した保彦は、跨いでいた腰の上から一旦降り、テーブルの上に片膝座りとなった。

 ふと見ると、暴れた拍子に涼子のヒールは両方とも脱げ、一つがテーブルの上に転がっていた。下半身は自由なのだが、ストッキングの足裏を何も置かれていない広い天板に滑らせているだけだ。女という生き物が、こんな踏ん張りの利かない靴と、いざというとき障害になるレッグウェアを身につけるという、甚だ危機感のない習慣を持っていることに感謝していると、

「あなた、自分が何をしているか、わかってるのっ!!」

 腕の自由が利かないだけで、ほぼ全ての自由を失ったことを悟った涼子が怒鳴りつけてくるが、

「ディレクターこそ、自分が何をされようとしているか、わかってるんですか?」
「わけのわからないことを言ってないで、外しなさいっ!!」
「わからないわけないでしょう、聡明な古宮涼子ディレクター様なら」

 ジャケットの下は、襟縁がほぼ水平に見えるワイドネックの白のカットソー、粒石のナローチェーンネックレスが乗った直上で、次の怒声と一緒に唾液を呑み込む喉が蠢いたのが見えた。そしてその隣には、寝転がってもラペルエッジとトップスの白生地との間に影を作るほどの、倨傲が実体化したかのような、見事な曲面を誇る隆起が堂々と控えていた。

「……いいわ、何が目的なの? 話し合いましょう」

 青ざめて凍りつきかけた涼子だったが、毅然とした顔ばせを崩さずに問うてくる。

「話し合い?」
「ええ、こんなふうに人を縛り付けてないで、ちゃんと議論したらいいでしょう?」
「話し合ったら、ディレクターは了承してくれるんですか?」
「そうね、動物じゃあるまいし、人間なら人間らしく話し合って、結論に納得したら、私だって了承することもあるわ」
「そうですか」
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