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なりすました姦辱
第2章 制裁されたシングルマザー
「あなたっ……!」

 ようやく、不測の事態の仕掛人の正体が理解できたようだが、

「どうも、古宮ディレクター。またお会いできました……ねっと!」

 脇と腕の間に手を突っ込み、肘の近くをつかんで強引に上げさせる。やっと、肉体的な反抗を始めようとするが、真上から全体重をかけて天板へと抑えつけた。

 だが、そこから、作戦が滞った。

 涼子に逃げられないようにしつつ後ろを振り返ると、汐里は壁際につくねんと立ち尽くしていた。

「おいっ、汐里!」

 怒鳴ると電源が入ったかのように弾ねるが、あれだけのうのうと小芝居を打っていたくせに、いざとなると足が竦んでしまっているようだった。

「汐里っ、早くしろっ!」
「……でも……」
「どういうことなのっ! 広瀬さんっ!!」

 涼子も怒鳴りつけると、保彦から以上に震え上がっている。

「……おい汐里。ここまできて悩んだってしょうがないぞ? この女は、お前が、ここに連れてきたんだ。それにテーブルの下の物は全部、お前が用意したんだからな。お前はとっくに、共犯者なんだよ。むしろ、お前が主犯かもしれないな」
「そんな……」
「でも、俺のために、してくれたんだろ? 大丈夫だ、最後までやり遂げたら、ちゃんと可愛がってやる」
「……ほんと、……ですか?」

 汐里の顔つきから退怯の色が薄まり、期待の色が増していく。連夜の姦虐は保彦に不満を残させたが、汐里もまた、心の籠もっていない玷辱に、満足できていないことには気づいていた。

「ああ。だから早くしろ」
「う、うん……、いえ、わかりました」

 汐里がテーブルを巡ってきて、涼子の頭の側にしゃがんだ。
 次に立ち上がったときには、太い手枷を持っており、それを涼子の手首へと巻き付けていく。

「うっ……、広瀬さんっ! 何してるのっ、やめなさいっ!!」

 涼子の怒声にも怯まず、汐里はもう一つも拾い上げると、残された手首にもしっかりと括りながら、

「すみません、ディレクター。でも、こうするしかないんです」

 涼子に対してではなく、まだ良心とやらの片隅に残っていた迷いを振り切るために、自分自身へと伝えたのだろうが、保彦にとっても、別の意味で同意見だった。

 この女には、きっと脅迫なんて通用しない。
 ならば、こうするしかない。確かにそうだ。
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