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桜咲く 誘惑の宵
第1章 桜の宵 誘惑の夜

メガネの子、山下萌香(やましたもえか)は、黒髪ボブの、どちらかというと大人しいタイプだ。だから小さな声でそう提案されて、ちょっと意外な気がした。
「自転車の後ろに乗せてやるよ。っていうか、山下さんも自転車通学じゃなかったっけ?」
「そうなんだけど、今日はバスで来たの」
「そうなんだ」
遊び仲間のグループでも、萌香とはあまり話したことがなかった。だからそれっきり会話が途切れてまう。
「蓮見くんって、彼女とかいる?」
僕が黙っていると向こうから話しかけてきた。
「いないけど」
「……そうなんだ」
「山下さんは?」
「えっ。わたし?」
「うん。いるの?」
聞かれたから聞いた。ただそれだけなのに、メガネの奥の目がたじろぐのがわかった。
……綺麗な目をしてるんだな。
澄んだ大きな瞳が僕を見つめる。ちゃんと見たことがなかったから気づかなかった。なぜか胸がドキッとしたので、目を逸らし、前を向いた。
「いないけど……さ」
「ん?」
「好きな人はいるよ」
僕の横を歩く女の子が、ポツリと言った。
「自転車の後ろに乗せてやるよ。っていうか、山下さんも自転車通学じゃなかったっけ?」
「そうなんだけど、今日はバスで来たの」
「そうなんだ」
遊び仲間のグループでも、萌香とはあまり話したことがなかった。だからそれっきり会話が途切れてまう。
「蓮見くんって、彼女とかいる?」
僕が黙っていると向こうから話しかけてきた。
「いないけど」
「……そうなんだ」
「山下さんは?」
「えっ。わたし?」
「うん。いるの?」
聞かれたから聞いた。ただそれだけなのに、メガネの奥の目がたじろぐのがわかった。
……綺麗な目をしてるんだな。
澄んだ大きな瞳が僕を見つめる。ちゃんと見たことがなかったから気づかなかった。なぜか胸がドキッとしたので、目を逸らし、前を向いた。
「いないけど……さ」
「ん?」
「好きな人はいるよ」
僕の横を歩く女の子が、ポツリと言った。

