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わたしの昼下がり
第29章 煙草の吸殻
 娘たちは先日の授業参観日があったので、今日は学校はお休み。目覚ましを掛けなかったのでしょう、二人ともまだ寝ています。朝食をとりながら夫が新聞を読んでいます。今朝は気になる記事があったと見えて、食べ終わっても新聞に目を落としています。団地を出るバスの時間が迫っていますが、夫は新しい煙草に火を付けました。

 「そろそろ、〇時になるわよ…」
 「ん? おっと…」

 夫の声を今日はじめて聞きました。

 珍しく、いつもの時間より遅く起きてきた夫。くわえていた煙草を灰皿に押し付けると、急いで背広に袖を通して出て行きました。根元まで吸われることもなく、そしてきちんと火を消されることもなかった吸い殻から、煙が薄く立ち上っています。

 煙草の匂いが△井のことを思い出させます。事が終わるとたばこをふかす△井。違う銘柄の吸い殻が灰皿に残っていたら奥さんもお困りでしょう…と、夫が吸っている煙草に銘柄を合わせて、ここを訪ねてくる男。

 吸っている煙草は同じでも、夫と違って△井は煙草をゆっくりと根元まで味わいます。そして、吸い殻を灰皿の縁に丁寧になぞらせてきちんと火を消します。

 昨夜も夫は遅くに帰宅しました。わたしもいつものように先に休んでいました。それが昨夜は珍しく、わたしを求めてきたのです。そして、思いを遂げるとすぐに寝息を立て始めました。わたしを置き去りにして。これもいつものことではあるのですが。

 わずかな時間でしたが、ちょうどその時間の分だけ夫は遅い時間に起きてきました。ただ、いつもの朝の感覚でいたようです。昨夜あった事などわたしが見た夢か幻だったかのように。夫がいつものように朝食をとりながら新聞を読み、慌ただしく出て行った後、わたしは、くすぶっている吸い殻の火を念入りに消しました。置き去りにされた自分を処理するように灰皿の縁に丁寧になぞらせて。今日が普段通り学校のある日なら…。

 広げられたままの新聞のページには、経済関係の解説が載っているようでした。何気なくページをめくっていくと、映画館の上映案内がありました。いちばん端のピンク映画の題名に入っていた『団地』の二文字が浮き出て見えました。明日になればまた学校が始まります。△井は何本の吸殻を残してくれるのでしょう。
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