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誰にも言えない、紗也香先生
第4章 彼の初めての「答え」
朝の授業が終わったばかりの廊下は、どこかけだるくて、静かだった。
私はまだ、教壇に立っていたときの緊張が残る指で、チョークの粉を払うようにしながら歩いていた。白い粉は、指の隙間にうっすらと染み込んでいて、それが妙に現実的で、私を教師としての「今」に繋ぎとめてくれているような気さえした。

そんなときだった。

「先生、あの……ちょっと、いいですか」

ふいに背後からかかった声。
聞き慣れた、でもいつもより少しだけ勇気のある響き。
振り向くと、そこには勇くん。無口で、どこか影のあるまなざしの彼が、スマートフォンを胸の前に差し出していた。

画面を見せられるまでは、ただの質問か何かかと思った。けれど、
そこに映っていたのは——

「先生の声、けっこうバズってるんです」

「……え?」

ほんの一瞬、息が詰まった。
タグが、目に飛び込む。#hysterical #literature #japan
動画のサムネイルは、ぼやけてはいたけれど、見間違うはずもない。
革のベルトに封じられた腕、伏せた視線、わずかに震える肩。
そこから流れ出すのは、確かに私の声だった。

最初は、感情を抑え、淡々と読んでいたはずだった。
それなのに次第に、抑えていた吐息が漏れはじめ、
単語が、文章が、熱を帯びて崩れていった……
言葉の途中に挟まる小さなうわごと。
甘く、恥ずかしく、逃れようのない音色。

それはまさに、あの夜の私の……抑えた吐息と、熱を帯びた声。

「やめてっ……勇くん、これ……!」
思わず、声が裏返った。
一気に頬が熱くなるのがわかった。
制服の襟元にまで、汗が滲んでくる。
後ろを通り過ぎていく生徒の気配が、いつもより何倍も強く感じられた。

「でも、すっごい反響で……」
「“この声の女性にまた読んでほしい”って、たくさんコメント来てるんですよ」

スマートフォンを見つめる勇くんの声には、どこか誇らしげな響きがあった。
それが不思議だった。普段の彼なら、こんなふうに話すなんて思わなかったのに。

私は、動揺しているのが自分でもわかっていた。
でもそれと同時に、胸の奥がくすぐったく揺れていた。
彼の見せた照れたような笑顔が、なぜだか、心に引っかかって離れなかった。
ふだんの勇くんの無表情とはまるで違う、その表情。
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