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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第15章 罪深きおこない

士族に乗っ取られた冬の宮中は、かつての荘厳さを失い、緊迫した空気に支配されていた。
広々とした大殿の床は、黒光りする板間に無数の傷が刻まれ、かつては色鮮やかな几帳や御簾(ミス)も、今はほつれ、煤でくすんでいる。柱には武士の刀が無造作に立てかけられ、華やかな金蒔絵の装飾は、ところどころが剥がれ落ちている。
玉座の周囲には、粗野な声や甲冑の擦れる音が響き、かつて帝の声がこだました空間は、まるで戦場の野営地を思わせる荒々しさをおびていた。
「そこへ座れ」
本来、帝が座るはずの玉座には、領主となった男がふんぞり返っていた。
黒い甲冑に身を包み、腰に佩いた刀の柄に手を置くその姿は、威圧的で、しかしどこか落ち着きを欠いている。
「おぬしが、2日前に捕らえたという、怪しい術をつかう者だな」
領主の声が、広間に低く響く。
目の前で平服する巫女に、ゆっくりと視線を落とした。
「おもてを上げよ」
巫女は静かに顔を上げ、領主の視線を正面から受け止めた。

