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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第2章 人喰い鬼の討伐

はるか昔──とある山村の神社には、強い霊力を持つうら若き乙女がいた。
彼女は巫女(ミコ)姫。
モノノ怪や呪いのたぐいを祓い、清める者。その噂は隣の村や、遠く都(ミヤコ)の貴族にまで広く知られる実力だった。
そして今日もまた、彼女を頼ってモノノ怪退治の依頼がくる。
「巫女姫さまー!」
「どうされましたか?」
観音像の前で手を合わせていた巫女は、外から自分を呼ぶ声を聞きつけて振り向いた。
腰まで覆う艶やかな黒髪が、ハラりと肩から垂れる。
「都(ミヤコ)からの遣者殿が、巫女さまをお訪ねです」
「はるばる都から…とは、いかなる御用でしょうか。伺いましょう」
戸を開けて外に出た巫女の前には、到着したばかりの従者たちが腰を屈めて並んでいた。
「──…鬼、で御座いますか?」
「さようで御座います。一年ほど前から、都の北東にそびえる蓬霊山(ホウレイヤマ)の山頂に恐ろしい鬼が住みつき…人間をさらっては喰ろうておるのです」
「人喰い鬼ですか?何故これまで放っておかれたのです?」
「これまでも多くの祈祷師(キトウシ)や法師を向かわせたが…ひとりも帰ってこなかったのです」
「…それはお困りでしょう。わかりました。わたしがお受け致します」
話を聞くに、人喰い鬼の被害に悩む帝(ミカド)からの勅命らしい。
命の危険もあるモノノ怪退治だが、彼女はこれまでもそういった依頼を何度か受けてきた。
(人喰い鬼とは……許せませんわ)
遣いの者とともに、巫女は蓬霊山に向けて村を出発したのだった──。

