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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第9章 朝露の来訪者

鬼が境界の闇に創り出した 朝 は、昼へと移り、夜を超えて……やがて再び朝となる。
それは、人の世にある四時(シジ)にそっくりだった。
(でも…どこかが不自然ね)
ただ、屋敷の縁側(エンガワ)でそれを眺めている巫女姫は、少しの歪(イビツ)さに気付いていた。
本当は、彼女がいるここ境界に、時間の流れは存在しない。
この時間の移ろいは、あくまで鬼が見よう見まねで作った概念(ルール)だ。
太陽の方向と、影の向きがでたらめだったり
花をつけない種類の木に、小花が咲いていたり
夜行性のはずの鳥が、昼の青空を飛んでいたり
……やはり此処は、人の世とは違う。
偽物の風景。
(これを作ったあの男は、また、屋敷の奥へ消えていった)
巫女の隣に鬼の姿は無かった。
鬼は昨夜も彼女のもとへ来ていない。
『 俺を惑わしておいて、俺の欲望を縛る。
まるで呪いだ。
お前は本当に、ただの巫女か? 』
彼女との問答を経て
──ただ肉体を支配するだけでは駄目なのだと、本気で悩んでいるのだろうか?
....ガサッ
「──…え?」
鬼の本心はどこなのだろうと考えている巫女の目に、ふと、森の草むらから顔を出す小動物が目に映った。

