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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第13章 蛇との取り引き

「嫉妬したか?」

 鏡を前に押し黙る巫女に、大蛇(オロチ)がニヤリと笑いながら問う。

 赤い縦長の瞳が、薄暗い地下の部屋で妖しく光った。

 巫女は一瞬息を呑み、慌てて否定した。

「そんなコトがある筈ありません」

 彼女の声は動揺が滲んでいた。大蛇の言葉は、彼女の心に潜む鬼への複雑な感情を揺さぶる。

「まぁ怒るなよ。もう少し鏡を見てみたらどうだ?」

「?何を見ろと…──」

 大蛇は軽薄な口調で促し、巫女の視線を天哭ノ鏡へと導いた。

 彼女は躊躇いながらも、鏡の輝く表面に目を向ける。

 瞬間、鏡に映し出されたのは都(ミヤコ)の様子だった。

「これは……?」

 だが、そこは彼女が知る華やかな都ではなかった。

 瓦礫が散乱し、かつての堂々たる門は崩れ、朱塗りの柱は黒く焼け焦げている。町屋の屋根は半ば落ち、道には折れた車輪が転がり、風に舞う灰が空を濁らせていた。

 都は、まるで戦乱の爪痕に蹂躙された廃墟と化していたのだ。



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