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わたしのお散歩日記
第1章 古びたアパート

わたしの最近の日課はお散歩。テレビを視ていてもつまらないし、お家の中でだらだらしているくらいならお散歩でもしていたほうがいいかなと思いまして。歩くコースや時間はその日の気分やお天気によってまちまち。『犬も歩けば棒に当たる』っていうし、なにかいいことあるかもしれない…なんて。路地裏を歩いて思わぬところにつながっているのがわかるとうれしかったりします。
最近気になっているのは一軒の古びた二階建てのアパート。大きな通りから気まぐれで入ってみた路地にありました。錆びたトタン板で覆われた壁やサッシではない窓枠は築何十年というたたずまい。木でできた塀で囲まれていて、随分前の選挙のときのポスターが貼られたまますっかり青白くなっています。
看板はかかっているけどペンキで書かれた文字はかすれてしまっていてよく見えません。たぶん『〇〇荘』と書いてあるのだと思いますけど。1階3部屋、2階3部屋の合わせて6部屋というところ。2階へはこれもすっかり錆びついてしまった階段が取り付けてあります。
1階の部屋の前には植木鉢がいっぱい置いてあったり、壊れて乗れそうもない自転車が立てかけてあったり。ドアの郵便受けにチラシが詰め込まれたままになっている部屋もあります。人が暮らしている気配がある部屋は半分くらいでしょうか。夕暮れ時に前を通ったこともありましたが、そのときは明かりがついている部屋は一つもありませんでした。
植木鉢の植物はどれも青々としていますので、住んでいる方が水やりなどもちゃんとされているのでしょう。きれいな花を付けた鉢があって、しばらくは花を見るのをたのしみにしてアパートの前を通っていました。
そんなアパートがさらに気になることがありました。ある日、アパートの部屋から、こんなことを言っては住んでいる方には悪いのですが、古びたアパートに似つかわしくない女の人が外付けの階段を上がっていくところに通りかかったからです。
女の人の年の頃はわたしと同じくらい。つまりは四十前後の奥様風の雰囲気。スプリングコートを着てハンドバッグを提げていました。品のよいヒールを履いていて階段の踏み板がカンカン…と鳴っていました。
最近気になっているのは一軒の古びた二階建てのアパート。大きな通りから気まぐれで入ってみた路地にありました。錆びたトタン板で覆われた壁やサッシではない窓枠は築何十年というたたずまい。木でできた塀で囲まれていて、随分前の選挙のときのポスターが貼られたまますっかり青白くなっています。
看板はかかっているけどペンキで書かれた文字はかすれてしまっていてよく見えません。たぶん『〇〇荘』と書いてあるのだと思いますけど。1階3部屋、2階3部屋の合わせて6部屋というところ。2階へはこれもすっかり錆びついてしまった階段が取り付けてあります。
1階の部屋の前には植木鉢がいっぱい置いてあったり、壊れて乗れそうもない自転車が立てかけてあったり。ドアの郵便受けにチラシが詰め込まれたままになっている部屋もあります。人が暮らしている気配がある部屋は半分くらいでしょうか。夕暮れ時に前を通ったこともありましたが、そのときは明かりがついている部屋は一つもありませんでした。
植木鉢の植物はどれも青々としていますので、住んでいる方が水やりなどもちゃんとされているのでしょう。きれいな花を付けた鉢があって、しばらくは花を見るのをたのしみにしてアパートの前を通っていました。
そんなアパートがさらに気になることがありました。ある日、アパートの部屋から、こんなことを言っては住んでいる方には悪いのですが、古びたアパートに似つかわしくない女の人が外付けの階段を上がっていくところに通りかかったからです。
女の人の年の頃はわたしと同じくらい。つまりは四十前後の奥様風の雰囲気。スプリングコートを着てハンドバッグを提げていました。品のよいヒールを履いていて階段の踏み板がカンカン…と鳴っていました。

