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ゆらぎの夜
第1章 はじまりの香り
窓の外、春の風がそっと揺れる街路樹の葉を撫でている。
彼の香水がまだ私の髪に残り、胸の奥で甘く香った。
「待ってるよ」その言葉が、心の奥底で優しく波打つ。
手を伸ばすけれど、触れられないもどかしさに胸が締めつけられる。
ベッドのシーツはまだ温かく、彼の痕跡が織りなす記憶の海。
一緒に過ごした夜の余韻が、まだ肌をくすぐっているみたいだった。
でも今はひとり。
風が部屋の隙間から入り込み、
彼の声が囁くように胸に届いた気がして、瞳が潤む。