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ゆらぎの夜
第8章 ずるいよ
沈黙のなか、部屋の時計が秒を刻む。

「私は、あなたの特別になれないって、わかってる」
「それでも……そばにいたいって思っちゃうの。ずるいよ」

私の目から一粒、涙が落ちる。

彼の手が頬に触れ、その涙を拭ってくれる。
その指先のやさしさが、もっと苦しい。

「ごめん」
「ごめんじゃ、だめ」

抱きしめられてしまえば、何も言えなくなる。
心が、体が、求めてしまうから――

触れ合うたびに、罪のような甘さに溺れてしまう。

今夜もまた、私は彼に溺れていく。

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