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ゆらぎの夜
第8章 ずるいよ
「ほんと、ずるいよ……」

思わず口をついたその言葉に、
彼は少し困ったように笑った。

「そう? どこが?」

ソファに並んで座る私の手を、彼はそっと包み込む。
指先だけで伝わるぬくもりが、心をかき乱していく。

ずっと好きだった。
でも彼には恋人がいた。
なのに、時折私にだけ見せる、あの優しさ。

「期待しちゃうでしょ。そんなふうに触れられたら」

彼は言葉を失って、それでも手を離さなかった。
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