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木漏れ日をすくう手
第2章 雨音のかたち

雨は、まだやまない。
部屋の窓を打つ音が、昼間の保健室を思い出させる。
葵は制服を脱ぎ、やわらかな部屋着に着替えて、ベッドの上に寝転がった。
(優しくなる、か……)
椎名先生の声が、耳の奥でふわりと揺れる。
言葉の意味を考えるうちに、心がすこしずつ、落ち着いていくのを感じた。
あの人の手の温度。
落ち着いた話し方。
そばにいると、呼吸が整っていくような安心感。
先生にとっては、たぶん何気ない時間だったのだろう。
でも、葵にとっては、今日の雨も、放課後の沈黙も――
きっと、忘れられないものになる。
机の上には開きかけのノートと、濡れたままの傘。
静かな夜の部屋で、葵はひとつ、小さく深呼吸をした。
胸の奥に芽生えたこの感情に、名前はまだつけない。
ただ、そっと、そばに置いておきたかった。
部屋の窓を打つ音が、昼間の保健室を思い出させる。
葵は制服を脱ぎ、やわらかな部屋着に着替えて、ベッドの上に寝転がった。
(優しくなる、か……)
椎名先生の声が、耳の奥でふわりと揺れる。
言葉の意味を考えるうちに、心がすこしずつ、落ち着いていくのを感じた。
あの人の手の温度。
落ち着いた話し方。
そばにいると、呼吸が整っていくような安心感。
先生にとっては、たぶん何気ない時間だったのだろう。
でも、葵にとっては、今日の雨も、放課後の沈黙も――
きっと、忘れられないものになる。
机の上には開きかけのノートと、濡れたままの傘。
静かな夜の部屋で、葵はひとつ、小さく深呼吸をした。
胸の奥に芽生えたこの感情に、名前はまだつけない。
ただ、そっと、そばに置いておきたかった。

