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ぬくもりの余韻
第1章 朝焼けに触れる
「ひさしぶり、だな」
ベランダ越しに見上げたその顔は、確かに、あの頃の柊だった。
けれど輪郭はすっかり男のものになっていて、目が合った瞬間、息が詰まった。

あの夜、再会を祝って乾杯したあとの沈黙が、あんなにも甘いものだったなんて。
ワインの残り香が残る唇を、柊がゆっくりとふさいだとき、私はもう何も言えなかった。

「……澪、変わらないね」
そう囁く声が耳の奥に届くたび、昔の記憶が溶けていく。
シャツのボタンを一つずつ外す指が震えていたのは、私も同じだったから。

シーツに指を滑らせながら、彼の温度を探す。
深く触れ合うたび、思い出すのは、小さな頃手をつないで走った夏の日や、帰り道で交わした秘密の言葉。

今、私たちは裸で向かい合っていて、それなのに、いちばん深いところでようやく触れた気がした。

「……朝が来るの、嫌だな」
彼の胸に頬を寄せて、そう呟くと、柊はゆっくりと髪を撫でてくれた。
「もう離さないよ」

朝焼けがカーテン越しに、二人の肌を照らしていた。


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