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火照りが引かないあなたに
第10章 宵の火照り
提灯の明かりが揺れる夏の宵。
人混みの中でふと振り返った彼女の浴衣姿に、息を呑んだ。

藍色の地に、淡く花が咲く。うなじから背へ流れる白い肌が、ぞくりとするほど艶やかだった。
金魚すくいに夢中になる彼女の横顔を見つめながら、俺はずっと、この指先を我慢していた。

「ねえ、ちょっと…疲れたから、裏道入らない?」

そう言って連れ込まれたのは、神社の裏手。人の気配も少なく、虫の声がやけに響く。
彼女は俺の袖を引き、石段の影でくるりと振り返った。

「ねぇ…こんなとこで、触れたいって顔してる」

浴衣の裾がすべり、彼女の膝がちらりと覗いた。
うなじにかかった汗がきらめき、夜の熱と祭りの余韻が全身を焦がしていく。

我慢できずに抱きしめた。浴衣越しの彼女の体は、想像よりずっと熱かった。
「帯、ほどいて」
その一言に、理性が焼け落ちる。

布の擦れる音。木々の間から差す月光。
触れ合う指と指、肌と肌。浴衣の奥の火照りが、すべてを飲み込んでいく。

甘い匂いと、密やかな喘ぎ声。
夏の夜は長い――けれど、この一瞬の熱は永遠に刻まれる。

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