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大きなクリの木の下で
第2章 二人だけのディナー

出勤したものの、何だか気恥ずかしくて竹本の顔をまともに見れない静香であった。
それでも、ちゃんとお礼を言わないといけないと、
意を決して彼のデスクの隣に立って「あの…昨夜はごめんなさい」と蚊の泣くような声を絞り出すと、「いえ、気にしないで」と、こちらも聞こえるか聞こえないかのような小声でそう言うと、そそくさとその場を逃げるように立ち去った。
竹本が元来から無口な青年で良かったと静香は胸を撫で下ろした。
約束した通り静香が酒に酔いつぶれた件や、
泥酔して介抱してくれたことなどなかったかのように顔を見合わせようともしなかった。
ただ、静香は泥酔して短時間と言えども爆睡したのに対して、
竹本は静香の面倒を見てくれて、失禁騒ぎまで起こしたので一睡もしていなかったにちがいない。
だから、勤務中に何度も居眠りをして、その都度、部長から叱責を受けていた。
いたたまれない静香は、スッと席を立って部長のデスクに近づき「あの…たぶん、彼なりに多忙期を頑張ったから疲れが出ていると思うんです…だから、あまり叱らないでください」と助け舟をだした。

