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大きなクリの木の下で
第2章 二人だけのディナー

「で…美代子、あんたは絶対にウチに泊まる気で来たんでしょ?」

「当たりぃ~!やっぱりあんたは勘の鋭いおなごじゃのぉ」

「それぐらいわかるわよ
もう電車もないこの時間にやって来たってのはおそらくマイカーでしょ?で、これだけ飲むつもりだから帰りは運転できないから泊まる気満々だって誰だってわかるわよ」

はいはい、その通りですよ~

そんな悪態をつきながらも、視線は竹本をロックオンして逃がさない。
まるで値踏みでもするかのようにジロジロと観察していた。

「じゃあ、僕、走って帰りますから
ちょうどいいロードワークになりますし」

電車がなければ走って帰ればいい!
妙案だと自分自身を心の中で誉めながら竹本は帰り支度を始める。

「そう?悪いわね
あ、そうだ!美代子、あんたまだ呑んでいないんだから彼を送ってあげてよ」

「そうね…それが一番手っ取り早いかもね」

「いえ、そんな迷惑はかけれませんし」

「そんな遠慮しないで
それとも、私の車に乗るのがそんなに嫌なわけ?」

ジロリと美代子が竹本を睨み付ける。

「そうですか?じゃあ…悪いけど送ってもらおうかなぁ」

これ以上、話をややこしくして
根掘り葉掘り二人の関係を聞かれても困るので
竹本は美代子に送ってもらうことにした。

住所を教えると、それをカーナビに打ち込んで
走り出してしばらくすると「で?本当の事を言いなさいよ」と美代子が前方を見据えたまま竹本に詰問してきた。

「本当の事って?」

「デキてるんでしょ?隠してもムダだからね」

「いや、本当にデキてるとか、そんなんじゃなくて…
確かに静香さんは素敵な女性だと思ってますけど」

「じゃあ、脈ありなのね?
あの子ね、中学生のころに両親を失くしているの」

「えっ?じゃあ、先月失くなられたお父様というのは…」

「育ての親よ…あの子は不幸のどん底を見てきたの
だから静香には幸せになってもらいたいの
いい?あの子を泣かせる真似をしたらタダじゃおかないわよ」

美代子はそう言って片手ハンドルで空いた方の手でパンチを繰り出す真似をした。

『友だち思いの素敵な女性だ…』

話し方も態度も粗暴だけど、根っからの善人だと感心した。

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