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終わりの温もり、始まりの愛
第5章 沈黙の窓辺
新幹線の車窓に映る風景は、どこまでも滑らかに過ぎていく。
山と川と、時折ちらりと見える町の姿。
二人は並んで座っていたけれど、ほとんど言葉は交わしていなかった。

窓の向こうでは春が少しずつ色を変えようとしている。
けれど、心の内はずっと冬のままだった。
ふと、由紀子の指先が膝の上で揺れるのが見えた。小刻みに、迷うように。

「……さっきの交差点、ちょっとだけ泣きそうだった」

ぽつりと由紀子が言った。
誠一は少し目を伏せて、小さくうなずく。

「……俺も」

言葉にしてしまえば、感情がどこかへ行ってしまいそうだった。
それでも、沈黙のままでは何も伝わらないとわかっていた。

「ほんとは、離れたくなかったのかなって、思った」

そう呟いた由紀子の声は、風景よりもずっと遠くへ流れていきそうで、
誠一は咄嗟にその手を取った。

驚いた顔をする彼女に、何か言葉を足したかった。
けれど、唇はただ震えて、声にはならなかった。

指先だけが、彼女の存在を確かめるように重なっていた。

触れて、離れて、また触れて――
夫婦としての時間はもう終わるはずなのに、まるで、今が始まりのようにも感じられた。

でもそれは、幻だったのかもしれない。
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