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終わりの温もり、始まりの愛
第8章 さよならの夜
部屋の灯りを落とし、二人は互いの目をじっと見つめ合った。
言葉はもういらなかった。
夜の闇がやさしく包み込み、時間がゆっくりと流れていく。

誠一の指が、由紀子の肩から腕へと滑り落ちる。
肌の感触が懐かしくて、切なくて、胸の奥が締めつけられる。

「ずっと忘れられないよ」
誠一の声は震えていた。

「私も…」
由紀子が微かに笑う。涙が頬を伝った。

幾年も前に閉じたはずの扉が、今、音もなく開かれた。
互いの身体は求め合い、時を忘れて重なり合った。

その夜は、終わりでもあり始まりでもあった。
たとえ離れても、心に刻まれたこの夜のぬくもりが、ふたりを繋ぎ続けるだろう。
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