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終わりの温もり、始まりの愛
第2章 ゆびさきの記憶

部屋に戻ると、窓際に置かれた灯りが、やわらかく床を照らしていた。
障子の外には、静かな山の夜。虫の声さえ遠く、世界にふたりきりのようだった。
「お風呂、ありがとう」
由紀子がそう言って、浴衣の裾を直しながら、布団のほうへと歩く。
その背を見送りながら、誠一はなぜか、心臓がやけに高鳴るのを感じていた。
数年ぶりに、同じ布団に入った。
肌が触れる。音もなく、呼吸が重なる。
ゆびさきが、彼女の髪に触れた。
しっとりと濡れて、湯の香りがまだ残っている。
「……さわらないでって言ったら、やめる?」
そう聞かれて、誠一は小さく首を横に振った。
「やめられない」と答える代わりに、そっと肩を抱き寄せる。
彼女のからだが、小さく震えた。
もう、どれくらい触れていなかっただろう。
なのに指は、まるで昨日まで愛していたように、すぐにすべてを思い出していた。
ため息のような声がこぼれた。
その声に、胸が締めつけられる。
ゆびさきが、なぞる。忘れかけていた、なつかしいぬくもりを。
やわらかくて、熱くて、どこまでも愛しかった。
言葉なんて、いらなかった。
ただ、ぬくもりが教えてくれる。まだ終わっていない、と。
彼女が、そっと涙をこぼしたのを、誠一は気づいた。
その涙に、自分のものも静かに落ちた。
障子の外には、静かな山の夜。虫の声さえ遠く、世界にふたりきりのようだった。
「お風呂、ありがとう」
由紀子がそう言って、浴衣の裾を直しながら、布団のほうへと歩く。
その背を見送りながら、誠一はなぜか、心臓がやけに高鳴るのを感じていた。
数年ぶりに、同じ布団に入った。
肌が触れる。音もなく、呼吸が重なる。
ゆびさきが、彼女の髪に触れた。
しっとりと濡れて、湯の香りがまだ残っている。
「……さわらないでって言ったら、やめる?」
そう聞かれて、誠一は小さく首を横に振った。
「やめられない」と答える代わりに、そっと肩を抱き寄せる。
彼女のからだが、小さく震えた。
もう、どれくらい触れていなかっただろう。
なのに指は、まるで昨日まで愛していたように、すぐにすべてを思い出していた。
ため息のような声がこぼれた。
その声に、胸が締めつけられる。
ゆびさきが、なぞる。忘れかけていた、なつかしいぬくもりを。
やわらかくて、熱くて、どこまでも愛しかった。
言葉なんて、いらなかった。
ただ、ぬくもりが教えてくれる。まだ終わっていない、と。
彼女が、そっと涙をこぼしたのを、誠一は気づいた。
その涙に、自分のものも静かに落ちた。

