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レッスンの仕方が間違っている!
第2章 1次審査結果
 人混みを縫ってある場所に向かって駆けていく青年が1人。
 必死でいてどこかニヤけた表情が雑踏の中見え隠れする。
 ある店の前で急ブレーキをかけて、銀のドアノブに手を掛ける。

「カラン、カラン」
「いらっしゃ~」
「こ、これ!」

 青年は店員が言葉を言い終わらない内に何かを即座につき出す。
 少し息を整えながらニカッと三角巾の店員に笑む。
 爽やかでいて、ふんわりとした雰囲気の可愛らしい顔。
 瞳は髪の色と同じ栗色。

「雪さん、見てよこれ!」
「え・・・・・・?」

 雪さんと呼ばれた店員は青年の唐突さと、あまりのふんわりとした微笑みにキョトンとしてしまう。
 そしてなにやら、青年の掌には紙がグチャグチャに握り締められている。

「へへっ、受かったよ!1次」

 さっきまで、あんなに駆けてきたのにもう息を整え終わって笑む青年。
 雪は一瞬何のことかわからないというような表情をした。
 が、すぐに眼を見開いて、カウンタ ーの方に向かいながら叫んだ。
 この店はパン屋なのに喫茶店仕様になっていてカウンター席がある。
 因みにこの店の店主の西川 滝は珈琲に煩い。

「ねぇ~ちょっと貴方~?見て頂戴、これ!!」
「あのぉ~ゆっ、雪さんっそんな騒がなくても……まだ1次だし、ねっ?」

 店内の客から此方に一斉に注目が集まる。
 頭を掻きながら耳を紅くして照れる青年。
 それを見ながらカウンターで紙を広げ出す雪。
 そしてそれを覗き込む滝。

「凄いわよ。ほら、ちゃんと書いてあるわ。喜多 椿、1次書類審査通過!
きゃ~っ今日は大サービスしなきゃねっ?何がいぃかしら、貴方?」
「・・・・・・よし!今日は新作のガトーショコラパンとチーズスフレパンを奢っちゃうぞ~っ」
「滝さんありがと!」

 腕を捲り上げてガッチリとした腕に椿に飛び付く。
 滝が頭をワシャワシャする。
 椿の茶髪ね猫っ毛の髪がふわふわと揺れる。
 年相応ではけっしてない2人の絡み。
 ボーッとしながら、今日は新作のパンの効果でいつもより客が多いことに椿は今更ながら気付く。

「あら、2次審査は来週ね。頑張んなさい。」
「うん、勿論全力でね。」

 椿は得意気にVサインを出す。
 滝からサービスのパンを受け取り満足気に店を出た。

「カラン、カラン」

 揺れる店のベルには『snow fall』と書かれていた。
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