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レッスンの仕方が間違っている!
第6章 3次審査まであと5日
「雪さん、滝さん、こんにちは。」

 椿は近況報告も兼ねsnow fallに来た。
 珈琲の芳ばしさとチョコレートの程好く焦げたのが混じり合い、甘過ぎない香りが店内に広がっている。
 カウンターには椿だけだが、パンを買いに来た客は数人、トレイを持ってうろうろしている。

「コトンッ……」

 今日はカウンター席で珈琲を貰い、試作品をご馳走になったところだ。

「これ美味しいですね!!!?意外。」
「スイカを使うなんてちょっと考えられなかったんだよ……しかしねぇ、」
「パパぁ~!行ってきまーぁしゅ!!……ぁ、ちゅばきぃ~。」
「唯ちゃん、こんにちは。」

 店の奥から幼稚園児が椿目がけて突進して来た。
 椿は一馬のときもそうだったが、子供受けが良い。

「唯がどーしてもスイカっ、て聞かなくてね。あぁ雪、早くしないとバスに間に合わないんじゃないか?」
「……本当にっ!そうね、唯。ほら行くわよ。椿お兄ちゃんにバイバイしなさい。」
「バィバぁぃ!!」

 雪に手を引かれ、空いた方で腕を目一杯振る唯。

「カランーーーカランッ」
「またね、唯ちゃん。」

 店から出て行く2人を目で見送る。

「それでスイカパンなんですか。メロンパンはありますが、スイカはちょっと聞いたことないですね。」
「水っぽいから、あまり思い付かなかったんだ。完成に時間は費やしたがね。子供は強い。」

 滝はお父さんの顔で、雪と唯が出て行った扉を眺めながら微笑んで言った。

「あ、それで話の続きなんですけど、ひとまずファイナリストにはなりました。」
「椿ちゃん、簡単に言ってくれちゃうが、そりゃかなり凄いことでいんだよな?」
「そうなんですけど……」
「ん?」

 滝が訝し気に見てくる。

「実は、もっと凄いことが直後にあって。いろいろ、そのときは気にならなかったんですけど……後から考えたらそっちの方が現実味無くてっ。」

 困ったように笑う椿を見て、滝は目を丸くして笑った。
 椿は昨日、公園では終わらず、珍しく帰ってからも考えたのだ。
 そのときは気にならないが、後になって気になり出すタイプ。
 それがまた椿らしいのかもしれなかった。

「カランッーーー」

 一頻り滝の親馬鹿トークを聞かされた後、話が落ち着いてから椿は店を出た。
 天気が良く、羊雲が空を漂うのを椿は見た。
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