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第4章 仕事と、欲望と

「……そっか。じゃあ、仕事だけの関係に戻るよ。でもさ」

少し身を屈めて、私の耳元にそっと声を落とす。

「俺、ずっと見てるから。凛さんがどんなに平気なふりしてるか」

心臓が跳ねた。

彼の視線は、容赦がない。

私が何を隠しても、嘘をついても、全部見透かすような真っ直ぐさ。

それが、怖い。

それと同時に――どこかで、救われている気がする。

私はマネージャーで、彼は俳優。

プロとしての距離を保たなきゃいけない。

でも、その“正しさ”が、どんどん重くなってくる。

恒星は言葉を足さず、ただ静かに微笑んでから背を向けて去っていった。

私は手元のカップを見つめた。

あの夜よりも、今のほうが苦しいのはどうしてだろう。

気持ちを抑え込んでも、彼の視線ひとつで、簡単に揺れてしまう。

仕事と、欲望と――
その境目を、私はもう見失いかけていた。